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2017/06/16 01:42
10月の東京の空は青く澄み渡っていて
良く晴れ、なまぬるい強い風の日が続いていた。
まるで、夏を収穫してしまうかのように。
「本物のお花を使ったアクセサリーを作っている子がいるんだけど。」
と、バンドのギタリストをつとめる彼が不意に口にした。
彼のいう事はいつだって突然だ。
突然動いて、突然思いついて、突然決める。
そんな突然なんてお構いなしにギタリストの口は滑らかに滑る。
「でさ、今日俺らが演奏するコンサート会場でアクセサリーのお店を出店してもらおうと思って、来てもらった人がいるんだよ!いいかな?」
(おいおい!滑るのはギターの指板だけにしてくれよ。)
そうして私たち【花のある生活。】の作者である、「フラワーアクセサリー作家」と「旅の音楽家」は出会った。
…
旅の音楽家「ええっと・・・。!?ごめんなさい、どなたでしょうか?」
アクセサリー作家「話し通ってたんじゃない・・・ってことですよね?」
窓の無い地下室で演奏する音楽家は、スクリーンに青空を映し出していた。
あぁ、8月の四国で撮影してきた海だわ。
その日のコンサートバンドのオーナーであった旅の音楽家は、アクセサリー作家のことを、なにも知らされていなかったのだった。
…
終演後、アクセサリー作家のブースには、人だかりが出来ているようだった。
(お互い)ホッ。
「かすみ草のリング」という青色のリングが、ひときわ可憐に光っている。
2000円。
リングの中でちいさく揺れるブルーのかすみ草と、黒のレース。
・・ふち取っているのはなんだろう?
とても丁寧な作りで、どこかキラリと惹かれるものがあった。
そのとき連絡先を交換したっけな?
忘れてしまったけれど。
これっきり、
だったかも知れない出会いを変えたのは、
優しくて行動力があり、でも事故に遭うように突然なギタリストの存在と、
あとはSNSであった。
旅の音楽家がバンド用にと運営しているSNSに投稿すると、いつも反応をしてくれる人がいる。
それがアクセサリー作家。
最初はそれほど気にしていなかったオトコマエな旅の音楽家。しかし、本当にいつも反応をしてくれているものだから、ちょっとばかし相手さんのページをを覗いてみるようになる。
「そっか、このひと本当に毎日のように、新作を作り出しているんだ・・・すごいな。」
そんな日々が続く。
青く澄み渡っていて良く晴れた秋空は見事に収穫され、北風が吹く曇り色の空に変わっていた。
…
【無言で口説き落とされた】
思うのだけど、人はとにかく気にし続けてくれる相手がいると、しまいには自ら陥落に飛び込んでいくものだ。
としか言いようがない。
そんなSNSの日々が続いたある日、
旅の音楽家は、フラワーアクセサリー作家に言った。
「ねえ、一緒に仕事をしてくれない?」
とてもシンプル。
お互い初めてのお仕事は、
旅の音楽家の会社からリリースされるCDの、
"タワーレコード盤 初回特典" の制作を、
アクセサリー作家に一任させて頂く事だった。
旅の音楽家は、レコード店の営業とアクセサリー作家の仕事先とを交互に通い、もうほかに何も見えないくらいアグレッシブに夢中で駆け抜けていった。
*アクセサリー作家によるタワーレコード初回特典は完売した。
…
わたしたちは、育ってきた環境も、今まで就いてきた職業も、年齢も違う。
だけれど気付けばいつも側に居る。
新しい事業を始めた日も、ひどく落ち込んだ時も、クリスマスもお正月も、旅の音楽家の会社の海水浴の日も(笑)
あまりにあっさり過ぎて、気付かないんだけどね。
旅の音楽家は思う。
ここには何もかもがあるし、何もかもがない。
実現したいと頭に思い描く事があれば、それにむかってアクセルを踏めばいい。
モラルはあっても、制限は無い。
自分のやりたいことに向かって、とことん正直に生きるのだ。
世間体の物差しでもなく、他人軸でもなく、
自分が幸せだとかんじるものは何か?に向き合うこと。
アーティストが、肉や骨を削って本気で創り出す表現って、
他人の人生を変えちゃうマジカルだから。
さあ、たのしもうよ。